1983年1月14日

0600 起床。昨夜から実に平穏な航海である。僅かなローリング位しか感じられず、丁度以前釜山から神戸まで乗った3,000トンのコンテナ・フィーダー船が瀬戸内海を航行したとき位の感じだ。あんまり滑らかなので朝風呂に入る。本船の風呂は最初は蒸気バルブを開けるとバルブの根元からシューと白い蒸気が洩れたり、湯の中でクークークーと鳴るので気味が歩く、また火傷しないだろうかと少し怖かったが、船内には幾つもあるから混雑することもなく、私にあてられた Officer’s Bath Room は大てい空いているので殆どいつでも入浴可能であるし、日本式の風呂なので慣れると大変快適である。入浴後洗濯をして 0645 昇橋。まだ暗闇である。雪とのこと。レーダーを見るとチャイナ・ペンシルのプロッティングの跡がある。チャイナ・ペンシルのことは瀧川文雄先生から何度も伺っていたが、ガラス面だけでなく、反射してブラウン管上にも丁度物標の映像上に重なって映ることは知らなかった。実に巧みにできているのに驚かされる。0705 頃雪が止み、視界が開けた。右舷ウィングデッキに出て雪を踏みしめながら右舷を眺めるとレーダースクリーン上右舷正横後1点、距離約3マイルの同行船の航海灯(マスト灯のみ)がぼんやり見えた。オークランド出港の翌日1隻視認してから3日振りに見る他船の灯火である。レーダーによると、右舷正横約5マイルにももう1隻、また針路前方約21マイルにも同行船がある。Unimak の南東の Sanak Island の映像が48マイルレンジに映っている。針路287゚。気温マイナス5度。0735 までには雪は晴れ渡り、上空には低く雲が垂れ込めまだ薄暗いが視界良好となる。右舷正横後2点、距離2.3マイルの大型船、同じく右舷正横後5.2マイルの大型船の各白白2つのマスト灯と紅舷灯が明瞭に視認できた。ただ手前の船の後部マスト灯がフラッシングしているように見えることがあるのはどういうことか。

0750 一航士が「あの明るいところが Unimak です。下の方に稜線が見えます。」と右舷前方を指さす。見るとそこだけ灰色の雲が少し白く見える。Unimak の雪の反射だという。双眼鏡で見ると、中腹までは雲に隠されて見えないが、海に近いところの雪に覆われた山肌が認められる。先程の右舷正横の船は今はもう近くなり、コンテナ船であることがはっきり分かる。一航士が双眼鏡で眺めてシーランドの船だという。船名は分からない。一見して本船より大きく、ブリッジより前に12 Bays(もしかすると10 Bays)ブリッジの後に2 Bays、しかも船首の2 Bays を除いて甲板上4段積みし、深々と喫水を沈めて本船より僅かに速いスピードで走っている。船長によると、総トン数25,000トン位だろうという。本船も4段積み出来るのに3段目には2つ積んでいるだけで4段目には一つもない。何だか悔しい気持ちがしてくるから不思議だ。
0800 食事。朝食中も丸窓の外が気になって仕方がない。時々立ち上がって窓外を見る。次第に明るくなり雲間から青空が見えてきた。Unimak の雪山もくっきり見えてくる。昼間、しかも視界の良いときに Unimak を通過できるとは実に幸運だと思う。食事のとき「シーランドの船はコンテナを4段積みして何だか悔しい感じがします。」と話したら、一航士が「空バンだと思えばいいのです。」と言ったので皆笑った。朝食もそこそこに(とはいってもコーヒーと煙草2本吸ったが)昇橋し、Unimak とシーランドのコンテナ船を背景に右舷ウィングで記念撮影する。Unimak Pass は最狭部で幅10マイル、最浅部で水深約26 Fathoms(約47m)。Unimak 通過後雪となり、視界は閉ざされる。
 0945 頃、左舷側にある自室の丸窓から覗くと再び視界は良好となり、水平線上にアリューシャンの島々が点々と列なっているのが望見された。これより暫くアッツ島でベーリング海から離れるまで地理学上ベーリング海盆と呼ばれる深海上を航行することになる。

 

 

1030 頃昇橋。右舷ウィングデッキに出て船長三航士と共に雪の Akutan 島及び Akun 島を背景に記念撮影。


操舵室の窓は暖気をあてているものを除いて凍りつき、clear view window も回転を止めるとすぐ凍りつき、下につららが下がる。気温マイナス7.5度。ときおり激しい吹雪が襲い、視界を300m位に制限するかと思うと5分位で止み、雲間から青空が覗け、水平線までくっきりと見えるようになる。それ程変わりやすい。昼食中のテーブルへ二等通信士より左舷レーダー凍結の報告あり。右舷レーダーは時折廻していたので凍結していない由。どちらのレーダーとも凍結防止装置はついていないという。留意すべきことか。昼食後 1400 から 1630 まで昼寝。夕食後、半チャン1回麻雀。機関室に下り、一機士森井氏から、前から疑問に思っていたスラスト・ベアリングの構造につき説明を受く。また主機燃料噴射ポンプ、シリンダー・ライナー潤滑ポンプ、スラスト・ベアリング、シャ フト・トンネルの写真撮影。(2100 まで)
9時 速力 24.5ノット
10時 〃 20.25 〃
11時 〃 20.25 〃
Noon 〃 20.0 〃
0400 Sea Moderate                              S log 311’
0400 における針路305゚、風向NW、風力4、天候o、気圧994.0
大気温度 乾マイナス3.5・湿マイナス4.0、海水温度4.0、主機回転89.0、Log76
0648 a/c. to <287> at 54−04N, 163−25W             Showing S. log 365’
0800 Sea Moderate
8 における針路287゚(T)、風向NE、風力5、天候o、気圧994.0
大気温度 乾マイナス5.5・湿マイナス6.0、海水温度4.0、主機回転89.3、Log77
Put ship’s clocks ab’k 0h−15m
0900 Bore Ugamak Id P’k on <175> 5’.5 off & a/co. to 280゚
1015 Billings Hd abm <190> 5’.7 off & a/co. to 268゚
Noon Sea Moderate                           Reset S log showing 465’
Noon における針路268゚(T)、風向NW、風力3、天候o、気圧995.5
大気温度 乾マイナス7.0・湿マイナス7.5、海水温度4.0、主機回転88.1
1600 Sea Slight                                  S log 74’
1600 における針路268゚(T)、風向NW、風力3、天候o、気圧995.0
大気温度 乾マイナス7.0・湿マイナス7.5、海水温度4.0、主機回転88.6、Log74
2000 Sea Moderate
20 における針路268゚(T)、風向N、風力5、天候o、気圧995.0
大気温度 乾マイナス5.0・湿マイナス5.5、海水温度4.0、主機回転88.6、Log74
Put ship’s clock ab’k 0h−30m
M.N. Sea Rough
Reg. lights were strictly attended to
Round made, all’s well                             S log 228
M.N. における針路268゚(T)、風向N、風力5、天候o、気圧995.0
大気温度 乾マイナス3.0・湿マイナス3.5、海水温度4.0、主機回転86.0、Log80
正午位置 実測 54−22N 166−29W
推測 Coasting

航海時間 24−45
航海距離 492
航進時間 24−45
航進距離 492
平均速力 19.88
推測距離 465
同上平均速力 18.79
距離 From 2,101 To 2,577
海潮流 Tidal
Fresh Water
P S
NO.1 F.W.T. P112  S96
NO.2 F.W.T. F
NO.3 F.W.T. P94  S 93
Low A.P.T. F
D: f'm U マイナス11h-00

燃料残有量 196.3
       1844.9 
燃料1日消費量 1.8
          73.6
飲料水   −10
船内使用時整合
Ab’k 0h−45m
Total 3h−00m
Balance 4h−00m
二港間の合計
航海時間 4−14−10
航海距離 2,101
航進時間 4−12−18
航進距離 2,083
平均速力 19.23
推測距離 2,005
(D. Run by Log)
平均速力 18.51
(Av. Sp’d by Log)

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