1983年1月11日(火)
00:00頃昇橋。1月10日分の log book
記載内容転記。時折霧にかかる。霧堤か。晴れわたると満天の星。オリオンと大熊座の七つ星、北極星くらいしか分からないが素晴らしい。時々大きな火の粉が煙突から出て蛍のように飛んで暗夜に消える。当直航海士によると、今航でロスアンジェルス出港時、本船の船首楼はもとよりコンテナ3列分くらいしか見えない濃霧の中を出港してきたという。実に驚くべきこととは思うが、これが実態なのであろう。勿論事故があれば海難審判や刑事裁判での咎めは免れない。さりとて船長判断で止めれば正面から咎めるわけにはゆかないが、下船させるのであろう。もとより慎重な操船だということで表彰されるなど全く考えられない。船長のおかれている苦しい立場を垣間見る思いがした。起床したら
0830
なので朝食に遅れたと思って慌てて食堂へ行くとまだ1人しか着席しておらず、変だと思って考えたら、自分の時計を船内時に合わせてなかったためと知る。どうやら
0800 頃だったらしい。味噌汁、玉子目玉焼き、ちりめんじゃこ、かまぼこ大根おろし添え、白飯、漬け物。0900 から 1100
まで就寝。フィルムを入れ換え5枚撮影。部屋がむっと臭ってきたので下着洗濯。部屋に張り渡してあるロープに乾かしてあるものを見るのは気持ちが良い。昼食は魚の吸い物、鯨の串焼き、貝の酢の物、白飯、たくわん、(牛乳)、オレンジ。運動不足を感ずる。食事時間がすぐに迫ってくるのが恐ろしく感じられる。
無線業務の概要
1 |
国際周波数(中波の500KC)を常時聴取(遭難通信 S.O.S.)し、位置を確認し、近ければ救助に赴く義務がある。
本船の位置を遭難船に知らせる。(中には近くに居ても知らん振りして行き過ぎる船もある)
現在2人当直 8−12 局長 8時開局
12−16 次席
16−20 局長
20−24 次席
0−8 閉局 閉局中は(Auto Alarm)警救
自動受信機により、もし受信すると局長室及び Bridge で Alarm が鳴る。 |
2 |
対日本の短波通信(電報の送受) |
3 |
FAX の受画(気象及び新聞) |
4 |
電話による警救自動受信 2182KC A3 |
5 |
レーダー、方探、Loran、VHF の保守 |
6 |
入出港関係の事務(Purser としての事務を兼任) |
7 |
副衛生管理者としての職務
掖済会病院で約1ヶ月看護婦見習のような訓練を受け、点滴も出来る。実際1978年PGからブラジルへ向かう途中 “SENHORITA”
号上で78歳の宮崎出身の医師乙森虎次郎氏が食欲をなくし衰弱したとき、点滴(ブドウ糖6本)したことがある。同医師はブラジルのサン・セバスチャンで下船、日本へ帰国、3ヵ月後に亡くなった。 |
8 |
司厨部の人事考課管理及び会計主管 |
機械について
短波送信機
第1装置 短波の出力 1KW
4、6、8、12、16、22 MHZ
呼び出し用1、通信用2、計3波
3波×6=18波
電報送受 --- 世界中どこでも通信できる。但し、電離層の状況により通信可能な時間帯が狭められることがある。
中波の出力 500W
410、425、432、454、468、480、500、512 KHZ
計8波
船舶の対海岸局との通信、電報 --- 比較的近距離200km 位まで
第2装置 短波は第1装置のそれと同じ
S.S.B. (Single Side Band)無線電話装置
46、8、12、16、22 MHZ 計6波
JBO(東京 Radio)を中継して会社または乗組員自宅との無線電話 ---
3分間で1050円、1分増す毎に350円。アメリカを出港後3〜4日経つと感度良好となる。
第1受信機(短波受信機)S.S.B. 用の受信機を兼ねている。
第2受信機(短波及び中波の受信機)
第3受信機(中波専用)
Auto Alarm 警救自動受信機
電話警救自動受信機
予備送信機 発電機故障のときバッテリーのみでも送信できる。75W。
FAX 対日本共同ニュース(新聞)及び内外地気象天気図(決まった時刻に送ってくる。本船が取りたい時に取れるわけではない。)の受画。
国際VHF(国際港湾無線電話装置)(JRC−JHV−102型)
国際電気通信条約に基づく26チャンネル(15、17を除く1〜28チャンネル)プラス11のプライベートチャンネル、計37チャンネルを収容。
帳簿 Radio Log Book 無線業務日誌 (法定)
Battery Log 電池日誌 (法定)
船内電気 AC 440V 3相、60 Cycle
AC 100V 1相、60 Cycle
午後昼寝。1500
頃昇橋。航海士に「イルカが見えます」と教えられる。左舷前方約5ケーブルに白い波頭のようなものと、イルカの背びれらしきものが見える。10数頭であろうか。急いでカメラを用意してきたときには左舷正横約1ケーブルに見えていたが、ついに海面上跳躍せず、撮影しなかった。夕食カレー、メンマ煮つけ、白飯、ビール2缶。夕食後
1800 から 2000 まで通信長平石氏から概要説明受く。入浴後 Officer’s Smoking Room で Salon
門脇氏、福田氏と共に牛肉のさしみ、ビールを飲み雑談。中南米の美人の話しを聞く。途中から次席三航橋元氏も加わり 2300
まで雑談。本日16−20当直中左舷前方から右舷へ横切り行合船があったとのこと。
1983年1月11日付 Log Book 記載内容
0400 Sea very rough
Shipping sprays on decks at times S. log 321’
4における針路285゚(T)、風向SSW、風力7、天候b、気圧1023.5
大気温度 乾10.0・湿9.0、海水温度11.5、主機回転89.8、Log79
0800 Sea very rough
Ship pitching roughly up WSW’ly high swell
Shipping spray on decks at times S. log 398’
8における針路285゚(T)、風向SW、風力6、天候c、気圧1020.0
大気温度 乾12.5・湿11.5、海水温度11.5、主機回転89.1
Put ship’s clocks ab’k 0h-15m
1000 a/co. to 300゚ at D.R.P. 42-28N, 133-55W (Loran P. 42-22N, 134-22W)
Noon Sea very rough
Ship pitching roughly up SW’ly high swell
Shipping seas on decks at times. Reset S. log showing 472’
Noon における針路300゚(T)、風向SW、風力3、天候d、気圧1020.0
大気温度 乾12.0・湿11.0、海水温度11.0、主機回転86.7、Log74
1600 Sea rough
Ship pitching roughly on SW’ly high swell
Shipping seas on decks at times S. log 75’
16における針路300゚(T)、風向SSW、風力5、天候o、気圧1017.5
大気温度 乾11.0・湿10.5、海水温度11.0、主機回転88.8
2000 Sea rough
Ship pitching roughly up SW’ly high swell
Shipping seas on decks at times S. log 149'
Put ship’s clocks ab’k 0h-30m
20における針路300゚(T)、風向SSW、風力4、天候o、気圧1015.5
大気温度 乾10.5・湿10.5、海水温度10.0、主機回転88.1
M.N. Sea very rough
Ship pitching heavily up SW’ly high swell
Shipping seas on decks all the times
Reg. lights were strictly attended to
Round made, all’s well S. log 234’
M.N. における針路300゚(T)、風向W、風力6、天候o、気圧1013.0
大気温度 乾8.5・湿7.5、海水温度10.0、主機回転85.0
正午位置 実測 42−39N 135−00W
推測 42−45N 134−40W
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